2007年 07月 22日
弟に薦められて「夕凪の街・桜の国」 という漫画を読みました。 こうの史代さんという広島出身の漫画家が 描かれました。 2つの時代に生きる2人の女性の 原爆をめぐる人生を描いた物語です。 この漫画が 映画化され、21日から広島で 先行上映されています。 田中麗奈さんが主役で・・・ 話は全く変わりますが 爆心地から1キロも離れていない 広島市内のごく中心部に 生まれ育った私は、いわば原爆の漬物みたいな 子ども時代を送っていたと言っても 過言ではないと思います。 特に中学校時代は、授業の中に「平和教育」という時間が組み込まれて 原爆の映画を観たり、音楽の時間には「原爆ゆるすまじ」 などの かた~い歌 を習ったりしていました。 夏休みの宿題は 小・中学校では夏休み帳の他にも決まって「原爆の日の感想文」を書いていました。 そんな先生方の 指導に影響され 「原爆反対!」 「戦争反対!」と 本気で思っていました。 けれど そこには 自分の「意思」 などなかったように思います。 そんな時を経て 大人になって社会に出てみて、いつしか私は「広島は 原爆だけ・・・」 と他所から見られているということに 「恥」 を感じるようになりました。 ・・・ひとりよがり・・・そんな気がするように なっていました。 原爆の日に行われる 追悼式、その横でやっている「ダイイン」・・・ 誰かさんも 言っていましたけどほんとに 「なんの意味があるんだろう」 「やめてよ」 「そっと、しておいてよ」 と さえ思うようになりました。 原爆のほんとうの 悲しさを知らない人が 勝手にやってほしくない…と なぜ、そんな風に思うようになったのかは 自分でもよくわかりませんが、たぶん父と叔父のことが あったからじゃないかと 思います。 原爆が落とされた時 父は17歳、叔父は小学校2年生、8歳でした。 8人家族で、たった2人だけ生き残ったのです。 父は当時 大学の予科に通っていて 他県におり被爆は免れましたが、叔父は小さな体で 被爆し、負傷もかなりひどかったそうですが、ちいさな足で 何日もさまよい続けたそうです。 幸い、原爆の後遺症はありませんでしたが 叔父はとても 体が弱い人でした。 喘息がひどくいつも「メジヘラー」という とてもきつい薬を 肌身離さず持っていました。 けれども そんな体の傷よりも 叔父の小さな心には 大きなとげがつきささっていたことの方が重大でした。 父と叔父は大人になって 結婚して何年経っても 原爆のことは 決して語ろうとはしませんでした。 そして、叔父は 41歳で2人の子どもと奥さんを残して 心筋梗塞でとうとう 還らぬ人となりました。そんな心の傷をもっていながら とても明るい人でした。 この叔父を亡くしたことは 父にとって たとえようのない 悲しみだったろうと思います。たった2人の 生き残りの 兄弟なんですから。支えがなくなったと言っても 過言ではないと思います。 その父も 7年前に亡くなってしまいましたが・・・。 私は、この2人がどうして、原爆のことになると 口を閉ざしてしまうのか 分かったつもりで 本当に分かっていませんでした。 この「夕凪の街 桜の国」 という漫画を読んで やっと分かりました。 「夕凪の街」のストーリーの主人公 皆実(みなみ)は被爆して 13年後にある会社の事務員として 働いていました。 彼女も 父と妹を亡くし、母と2人暮らし。そして、やがて同僚の 打越さんに恋をし、彼からも愛され 結婚を申し込まれます。 けれど、皆実は 自分が被爆し生き残ったことを責め苦悩します。 そして、やがて被爆の後遺症が現れ始め 結婚することもできず 亡くなっていきます。 その時の 彼女の最後の言葉が 「十年経ったけど 原爆を落とした人はわたしを見て 『やった!またひとり殺せた』 とちゃんと思うてくれとる? 被爆のほんとうの悲しさを 分かっていなかったのは この 私でした。 父や叔父の気持ちは これだったんです。自分達だけ生き残って ごめんね。 と 言いたかったんです。 最後まで語ろうとしなかった叔父もたぶん皆実さんと 同じことを思いながら 死んでいったんだと思います。 1冊の漫画が 大切なことを 私に教えてくれました。 今度は 父のことを 書いてみようかな…(泣) いつのことになるやら。
by chirumegu
| 2007-07-22 22:12
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Comments(11)
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hokkori-hime at 2007-07-23 14:19
涙が溢れて・・文字が滲みます、
生き残った方もでしょうけど、残して逝かなければならなかった方々の思い、 どんなにか、無念だったろうと・・・ chirumeguさんの叔父さんやお父さんの心のとげ、抜いてやりたかったね、抜けるものなら・・
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west-msks at 2007-07-23 16:14
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kisaragi87 at 2007-07-23 20:12
そんなことがあったのですか。
私になど、とうてい考えもできない、察することも難しい悲しい事実なんですね、 原爆が、そして戦争がどれほど多くの人に、かかえきれないほどの悲しみや心の痛みを残したことかと思うとき、二度とこんなことを繰り返してはならないと強く思います。 chirumeguさんも、書かれるのがつらかったでしょう。 お父さまと、叔父さまが、今はふたりでゆっくりと話しながら、亡きご兄弟とも会われているといいな、と思います。
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やんくみ
at 2007-07-23 20:46
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お父様と叔父さんのお話、こうして書かれるのはつらいことでしょうね。でも、正直、広島に直接の知人のいない私は、chirumeguさんのこのブログを読んで、意外だったことがたくさんあります。授業の中に「平和教育」があったこと、原爆の日の感想文のこと、追悼式やダイインに対してのchirumeguさんの思い、広島といえば「原爆」と思われることに対しての拒絶感。間接的にはいろんな本や映画などで知っているつもりになっていても、chirumeguさんがこうして表現してくださったからこそ、初めて知ることばかりでした。
chirumeguさんがこうして書いてくださったことに、感謝。
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chirumegu at 2007-07-23 22:35
ほっこりさん こんばんは。
(ノω・、) ウゥ・・・ ほっこりさんのあったかいコメ見て 私も泣けます。 ありがとう。 ほんとに 抜いてあげたかったです。 でも、今、こうして 父達の気持ちがわかったので 喜んでくれるといいと思います。
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chirumegu at 2007-07-23 22:37
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chirumegu at 2007-07-23 22:41
kisaragi さん、こんばんは。
>私などとうてい・・・ そんなことありません。 >書かれるのがつらかった・・・これで充分分かってくださってるじゃないですか。・・ありがとう。 ほんとに 戦争は 悲しい事実を 造ります。 どうかお願いだからしないでって 思いますが…(-公-、)
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chirumegu at 2007-07-23 22:48
やんくみさん こんばんは。
昔から、この時期になると 気が重かったんですが、なぜなのか自分でもよく分かっていませんでした。 それは いや~な 「宿題」が あったから・・・かなぁ??? 感想を・・と言われてもねぇ。「知らんもんは知らんしぃ」って感じで・・・。
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npura at 2007-07-24 00:13
鍵コメにしようかどうしようか悩みましたけど、オープンにします
私はいわゆる親が被爆した被爆二世です、そして同級生数人も病気で亡くなりました、そして私も似たような病気と戦っています 因果関係はアメリカは完全否定してますが、症例としては否定しがたいものがあるのは既にマスコミ等で明らかにされ、政府も動かざるを得ない情況になってると聞いていますが、まず無理でしょう アメリカが原爆を落としたのは正義だと思ってる限り、民間人20万人が亡くなった事なんて両政府の首脳にとっては避けたい問題なのですから そして皆、時間と年月がそれを消滅してしまうのですから 多分(私の個人的な意見です)それを知っている人がいなくなるのを、この日本政府も待っている・・・と、それが現実社会なのでしょう (^0^)そうはいきません、私も含めていろんな人達の経験病歴を残し、次世代に残す活動をやってますよ地道にね、いつか実になれば私がいなくなっても少しは役にたつかなと(^0^)
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chirumegu at 2007-07-24 06:51
npuraさん、おはようございます。
この記事を書く時 一番気になったのが npuraさんの意見でした。記事にして 公開するかどうか しばらくおいていました。 広島で生まれ育った npuraさん、そして病気と戦っておられる・・と聞いて きっと「あの病気」なのでは と思っておりました。 そして、夕べ寝る前に npuraさんのコメントを読ませていただき 号泣しました。 嫌な思いをされたでしょうk、ごめんなさい。そして、思い切って公開してくださって ありがとうございます。 私は 政治的なことは 全くの無知です。アメリカも そして、日本政府もそんな風に思っているんですか。 余計に 怒りがこみ上げてきました。 けれど、被爆者、そしてnpuraさんのような二世の方々の気持ちは 残していかなければならないと思います。 npuraさんのやっておられる活動って どんなのかなぁ。 お手伝いできたら いいけど・・・
ほ~い
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